◇遷延性意識障がい者って?
日本脳神経外科学会による遷延性意識障がい者の定義(1972年)

Useful lifeを送っていた人が脳損傷を受けた後、以下の6項目を満たす状態に陥り種々の治療に対して殆ど改善がみられないまま3ヶ月以上継続した場合をいう。

  1. 1.自力移動が不可能である
  2. 2.自力で摂食が不可能である
  3. 3.屎尿失禁状態にある
  4. 4.眼球はかろうじて物を追うこともあるが、認識できない
  5. 5.声を出しても、意味ある発言は全く不可能である
  6. 6.目を開け、手を握れなどの簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思疎通は不可能である

遷延性意識障害患者の看護学上の定義(1991年日本看護研究学会)
脳の高次の機能を障害する何らかの原因によって自らの意思と能力では、食事、排泄、会話によるコミュニケーションなどの生活行為を確立することができず、生活全般に看護・介助を必要とする『重複生活行動障がい者』

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◇遷延ってどういう意味?
のびのびとなること。ながびくこと。(三省堂国語辞典)
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◇植物状態と遷延性意識障がいは違うの?
同じです。実は遷延性意識障がいの定義を上述いたしましたが、これは「植物状態の定義」と表現されており「遷延性意識障がいの定義」というものはありません。 「植物状態」という表現は欧米で使われているvegetative stateの直訳であり、こういう状態の障がい者を持つ家族としては植物のような「物」に例えられることには抵抗があり、このHPでも「遷延性意識障がい」と表現いたします。 一方、遷延性意識障がいという表現も分かりにくい、日本語として馴染みがない等の理由でもっと分かりやすい表現を学会・家族会で検討が始まっています。

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◇なぜ「障害者」ではなく「障がい者」と書いているの?
一般的には「障害者」「障害」と表現されていますが、「害」という文字は三省堂国語辞典を見ると「悪い影響」と解説されており、害虫や災害等好ましくないものに付けられることの多い文字であり、わかばではこの表現は適切ではないと考え、ひらがな表記とし「障がい者」「障がい」としていますので、このHPでも同様に表現しています。
(注)わかばでは使っていませんが、「障碍者」「障碍」と表現する場合もあります。

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◇遷延性意識障がいと脳死は違うの?
「脳死」と混同されることもありますが、脳死ではありません。
脳死とは脳幹を含めた全能の機能が不可逆的障害を受けた状態で①深昏睡 ②瞳孔固定 ③脳幹反射の消失 ④平坦脳波 ⑤自発呼吸の消失 ⑥以上①~⑤の条件をすべて満たし、更に6時間後にも条件を満たす、と定義されています。
遷延性意識障がいと脳死の違いを簡単に比較すると以下の通りです。

  遷延性意識障がい  脳死
 睡眠・覚醒サイクル 保持 なし
 自発呼吸 あり なし
 脳波 徐波化 平坦
 回復の可能性 可能性あり なし
遷延性意識障がいには下記の通り回復事例も多くあります。

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◇遷延性意識障がいって改善しないの?
完治はなかなか難しいのが事実ですが、日本意識障害学会等を聴講しても多くの意識障がい改善事例が報告されています。 ネットでも「遷延性意識障害からの回復例」として多くの回復事例が紹介されています。「遷延性意識障害からの回復例」については当HPの「リンクのページ◇ニュース」をご参照ください。
また、わかば会員の中にも紙屋式看護術(新看護プログラム)、脊髄硬膜外電気刺激療法(DCS)、脳深層部刺激療法(DBS)、音楽運動療法等により改善し、下記の最小意識状態や高次脳機能障がいに移行している例があります。が、保険適用になっておらず高額な費用がかかることもあります。
また、今後については脳に対しても再生医療(iPS細胞・ES細胞・骨髄間葉系幹細胞移植等)、経頭蓋直流刺激(tDCS)など先進医療やリハビリ用ロボットの研究・応用が進むことに期待しています。

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◇遷延性意識障がい者でも在宅で介護できるの?

わかばでは半分以上の方が在宅介護をしています。
今の医療制度の中では入院期間が3ヶ月を経過すると病院の保険点数が少なくなるため、退院又は転院を病院から促されます。そうなると家族は病院を転院するか、介護施設に入所させるか、在宅介護とするかの意思決定を迫られます。転院を受けてくれる病院や施設がない場合は、痰の吸引が必要な障がい者でも人工呼吸器をつけている障がい者でも、在宅介護とせざるを得なくなります。その場合、家族介護者は訪問診療や訪問介護やヘルパーに来てもらい、可能であればデイサービス、ショートステイ等を利用しながら24時間×365日の介護を余儀なくされます。わかば会員の方も多くの方が頑張って、それぞれに工夫をしながら在宅で介護をしていますし、家族介護により在宅になって症状が改善し、下記の最小意識状態や高次脳機能障がいに移行した方もいらっしゃいます。
在宅のためには家の改造が必要になる場合が多いと思いますが、改造費の一部助成制度や生活用具・屋内移動設備の給付制度もありますので、事前に最寄りの自治体にご相談ください。事後になると助成を受けられません。
また、堺脳損傷協会発行の「遷延性意識障がい者の在宅介護を考えている人のために」という小冊子(A5版で12頁;頒布価格100円+送料)も参考になると思います。堺脳損傷協会については当HPの「リンクのページ◇その他」をご参照ください。

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◇救急搬送されてICUから一般病室に移ったが、医師からは
 遷延性意識障がいになる恐れがあると言われました。今、何をしたらいいの?
意識レベルの回復において大事なことは常に何らかの方法で五感を刺激することです。 意識障がいを脱却した方の話しを聞くと、回りでの会話は聞こえていた、或いは自分が病院に居て誰が来ているか分かっていた、という方も多くいらっしゃいます。
これらから考えると「声掛け」「肉親のボディータッチ」は絶対に必要だと思います。
 「声掛け」は天気の話し、当事者の興味のある話・・・・等何でもいいと思いますがネガティブな話しは絶対にしないようにしてください。 本を読んであげる、というのもいいようです。
また「ボディータッチ」は手や足や顔を優しく触ってあげてください。当事者にも肉親の温もりが感じられ、安心できる筈です。もしできればですがソフトなマッサージもしてあげると拘縮の予防にもなるかも知れません。
上述の他にも好きな音楽や番組を録音してイヤホンで聞かせたり、好きなにおいをかがせたり、本人が印象的に思う風景写真や人物写真を見せたり、女性でしたらお化粧をしたり、色々と五感を刺激する方法を工夫してあげてください。 また、毎日の介護日記をつけることをお勧めします。一気に改善するという事は難しいですが、1日1日の積み重ねが後で考えると大きな改善につながっている事が多く、例えばその日記を見て3か月前と今日を比べたり、半年前と今日を比較することによって改善が実感でき励みになる事もあります。
併せて、ジル・ボルト・テイラー著(竹内薫訳)「奇跡の脳」という本の購読をお薦めします。これはアメリカの脳科学者であったテイラー博士がある日、脳卒中に襲われ以後8年に及ぶリハビリを経て復活した、という実体験を著したものです。単行本は新潮社から、文庫本は新潮文庫から発行されています。この中で付録Bとして「最も必要だった40のこと」という記述がありますが、これを理解し実践してください。
それと、どうしても当事者のことばかりに気がいってしまいますが、当事者以外の家族(特に高校生以下)の心のケアも忘れずにしてあげてください。
また、介護をしているとどうしても社会から孤立してしまっているような想いになってしまうことがありますので、当会に限らずどこでも構いませんので家族会に入会し、同じ環境の方との交流や情報収集もお勧めいたします。各地の家族会については下記に記しておきました。
一方で最寄りの自治体の保健福祉課又は障害福祉課を訪問し、障害福祉サービス制度や障害年金制度・成年後見人制度等について説明を受け、必要な手続きを進めてください。
また、堺脳損傷協会発行の「意識の回復を待つあいだに家族にできること」という小冊子(A5版で12頁;頒布価格100円+送料)も参考になると思います。更に発症原因が交通事故の方で、これから自賠責保険の請求や刑事裁判・民事裁判等を予定されている方は同会の発行している「交通事故“事故当初”から“地域の暮らし”まで」(1500円+送料)という本も参考になると思います。堺脳損傷協会については当HPの「リンクのページ◇その他」をご参照ください。

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◇状態が遷延性意識障がいと高次脳機能障がいの中間だと思えるが、
  この状態は何て呼ぶの?
欧米では2002年から学術的用語として「最小意識状態」(minimally conscious state)と表現され広く使用されています。
この定義としては
  1. 1.単純な命令に従う
  2. 2.正誤に係らず、身振りや言語で「はい」「いいえ」が表示できる
  3. 3.理解可能な発語
  4. 4.合目的な行動(意味ある状況での笑いや泣き、質問に対する身振りや発声、物をつかもうとする行為、物を触ったりする、何かを見つめたり、目で物を追ったりする等)
  5. 5.以上の1~4のうち、1項目以上が存在する
とされています。
日本でも徐々に浸透しつつあり、今後広く使用されることになると思います。

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◇「わかば」の会の正式名称には「脳損傷による」と書いてあるが何故?

脳の障がいには4つあると言われています。

  1. 1.発達障がい(知的障がい、自閉症など)
  2. 2.精神障がい(統合失調症、うつ病など)
  3. 3.退行性障がい(認知症、変性疾患など)
  4. 4.脳損傷(人生の中途の障がい;脳外傷、脳血管障がいなど)

わかばでは発症原因が主に4.の脳損傷の方で、現在の状態像が遷延性意識障がい(含、最小意識状態)の方を対象に活動していますので、正式名称を『脳損傷による遷延性意識障がい者と家族の会「わかば」』としています。
脳損傷の具体例としては、脳外傷は交通事故・転落・転倒・スポーツ事故・その他の事故、脳血管障がいは脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの総称)等の脳血管の病気、その他には脳腫瘍・低酸素脳症・脳脊髄炎などが挙げられます。

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◇遷延性意識障がいについてもっと知りたいが?
日本評論社から河北新報社編集局編の「生きている~植物状態を超えて~」という本が2012年9月に発行されました。値段は1600円ですが、ぜひご購読ください。
家族の思い、障がい当事者や家族の置かれている状況、社会資源の少なさ等がお解りになると同時に、改善事例や今後への期待等がお解りになると思います。
また、次項にある全国遷延性意識障がい者・家族の会では2013年秋に同会会員アンケートを行い、その結果を「家族の歩み」(246頁)としてまとめ、その縮刷版(50頁)も作成いたしました。ご希望の方は次項の最寄りの会にご相談ください。
一方、わかば会員の方は会員のページにログインしますと上記以外の各種参考文献・講演会等諸資料・会報バックナンバー等をアップしておりますのでご覧ください。

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◇わかば以外にも遷延性意識障がい者の家族の会はあるの?

わかばも賛同団体として加盟していますが、「全国遷延性意識障害者・家族の会」という全国組織があり、
下記の家族会が賛同団体となっています。
各家族会のホームページは当HPの「リンクのページ◇家族の会」をご参照ください。
◆全国遷延性意識障害者・家族の会  桑山
  TEL:072-893-3704 
◆(北海道地区中心)
北海道遷延性意識障害者・家族の会「北極星」 能勢
TEL:090-1303-2674
◆(東北地区中心)
宮城県「ゆずり葉の会」   樋渡
TEL/FAX:022-281-3969
◆(栃木県中心)
栃木県遷延性意識障害者・家族の会「らいめい」  八神
TEL/FAX:028-650-5320
◆(首都圏・関東甲信越地区中心)
脳損傷による遷延性意識障害者と家族の会「わかば」 荻田
TEL:090-7705-7596
◆(中京地区中心)
東海地区遷延性意識障害者と家族の会「ひまわり」  浅野
TEL/FAX:0532-63-5052
◆(北陸地区中心)
北陸ブロック遷延性意識障害者・家族の会「ぬくもりの会」  川越
TEL:080-3041-9049
◆(近畿地区中心)
頭部外傷や病気による後遺症を持つ「若者と家族の会」  川上
TEL/FAX:06-6567-1816 (電話相談 月~金10:00~16:00)
◆(九州地区中心)
遷延性意識障害者・家族の会 九州「つくし」  谷口
TEL:080-8562-0171  FAX:0982-33-1188

また、交通事故被害者の家族会として以下も賛同団体になっています。
交通事故裁判等につきましてはこちらにご相談ください。
◆交通事故後遺障害者家族の会  北原 
TEL/FAX:042-361-7386
◆交通事故被害者家族ネットワーク  児玉/佐藤
TEL:03-6661-1575  FAX:03-6661-1585

各会のホームページにつきましてはこのホームページの最終ページのリンク先をご参照ください。

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